産物紹介

てんぽ印のあるところ

2023.07.26

皆さんにお届けしている紙面に当然のように登場する「てんぽ印」。これは一体何なのか、と思う方もいらっしゃると思います。「てんぽ印」は農業に関わりたいと考える人材の受け入れ機関です。農業従事者の減少を受け、このような取り組みは全国各地どこにでもありますが、「てんぽ印」の特徴は①産物の多様性(柑橘だけに依存せず野菜などの栽培も行っていること)②栽培した野菜を自社工場で加工し商品化まで一貫して行う「新しい就農モデル」を実践していることにあります。

 

 

無茶々園では1997年、新規就農希望者の受け入れ拠点として研修センター(寮)を設立しました。「Iターンの受け入れ」「新規就農制度」など今では当たり前ですが当時は農業=継承産業という意識が強く、寮を構えてよそ者を受け入れる生産者団体は珍しく全国各地から様々な人材が集まりました。2年後にはてんぽ印の前身「ファーマーズユニオン天歩塾」を設立。大規模有機農業の実践を目指し、明浜から約80km離れた愛南町に甘夏畑を借り受けて出作りを開始。2002年以降は松山市北条で野菜・ゆず・伊予柑の栽培を手掛けるようになりました。

 

 

 

2011年には大根の大豊作を受けて切り干し大根を自ら製造し、商品化したことから生産・加工・商品化を一環として行う流れが生まれます。2018年6月、有限会社てんぽ印を設立。翌年には乾燥工場が完成しました。農業は天候に左右されますが自社工場の稼働により農業と組み合わせて安定した雇用の創出に成功しています。

 

 

 

このように書くと時代に合わせて順風満帆に進んできたように見えますが、経営が安定してきたのはここ数年であり、「今となっては笑い話」としか言いようのない数限りない失敗と経営危機を繰り返して現在に至ります。今年も天候に翻弄され甘夏の寒害被害は甚大なものでした。本来「甘夏といえばてんぽ印」という熱烈なファンがいるほど味の良い園地ですが今年は期待に応えることができずご迷惑をおかけしました。

また、てんぽ印の甘夏畑は、「樹に登って、さらに高枝切りばさみで収穫」しなければならないほどの巨木・老木の為、生産性が低いという問題も抱えています。今後改植を進め、数年後には生産性と味を兼ね備えた「やっぱり甘夏はてんぽ印」と言われる畑にするよう動き出しています。

 

 

 

てんぽ印の役割は、後継者育成から集団での有機農業の実践へ、さらに農業と加工場の運用による安定雇用の創出へと時代や社会情勢によって変化しています。しかし根底にある、「田舎暮らし」に価値を見出した移住希望者の受け皿でありたいという思いと、人間の根源的な生業である農業を次世代につなげたいとの思いは変わりません。現在、てんぽ印には海外実習生5名を含む15名が在籍し、平均年齢は31 歳。2020年日本の基幹的農業従事者数の平均年齢は67.7 歳。この年齢差だけとってみても、てんぽ印の存在は希望の星です。

 

てんぽ印の「てんぽ」とは「無鉄砲」「向こう見ず」に近い明浜の方言から名づけました。この名に恥じぬよう現状に甘えず未来を見据え果敢に挑戦する集団であり続けます。

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