産物紹介

養蚕農家が作るこだわりの桑茶

2024.03.20

焙煎絹茶、はじめます

このたび無茶々園では、新しく「焙煎絹茶」の販売をはじめることになりました。絹茶といってもピンとこない方も多いと思いますが、養蚕に使用される桑の葉を乾燥させたもののこと。いわゆる「桑の葉茶」です。煎茶のようにお湯を注いで飲みます。渋みや苦みがほとんどなく、爽やかな味わいと焙煎によって生じる香ばしさも魅力です。

 

乾燥させた桑の葉。クセのない、いい香りです。

 

栄養成分においても、食物繊維・各種ビタミン・ポリフェノール・カルシウム・鉄分・亜鉛が豊富に含まれており、腸活やお肌の健康を意識されている方におススメです。さらに、桑の葉特有の成分として知られるDNJ(1-デオキシノジリマイシン)が含まれており、食前に摂取することで糖質分解酵素と結合し、糖質の吸収を抑制してくれると言われています。ふだんから糖質を気にされている方は、絹茶を一杯飲んでからお食事されるとよいのではないでしょうか。

 

お食事前にどうぞ。

 

西予市における養蚕の歴史

さて、絹茶の原料となる桑の葉ですが、その大半は明浜町から車で30分ほど走った山間の地域「野村町」で栽培されています。河川周辺に桑園に適した肥沃な土地が多くある野村町では、明治のころから養蚕業が盛んに行われてきたそうです。収益性の高い養蚕業は宇和島を中心とする愛媛県南予地方の主要産業のひとつであり、昭和にはいるまで地域の暮らしを支えてきました。いまはみかん畑の広がる明浜でも、かつて桑の樹が植えられていたと伝え聞いています。

 

無茶々園がむかし事務所として使用していた家屋もかつて養蚕小屋でした。

 

しかしながら、昭和初期の恐慌とそれに続く戦時の食糧増産体制強化により養蚕業はいったん衰退。戦後立て直しが行われてその戸数は増加に転じたものの、昭和45年をピークにふたたび減少の一途をたどっています。かつては1,000軒以上を数えた養蚕農家も現在はここ西予市内には6戸を数えるのみとなり、その背景には絹の消費量減少、安い海外産の流入があるようです。

 

桑畑のようす。桑の葉は5月下旬~9月下旬の剪定時期に収穫します。

最近は気温上昇もあって、けっこうな重労働です。

 

衰退している養蚕業ではありますが、その品質はしっかりとしたもの。特に西予市産の生糸は評価が高く、恵まれた風土の中で飼育された繭と高度な製糸技術から生産された生糸は「カメリア(白椿)」の商標で取引され、古くはエリザベス二世の戴冠式のドレスに使用されました。2016年には、地理的表示保護制度※に「伊予生糸(いよいと)」として認定を受け、いまでも皇室や伊勢神宮式年遷宮等の御料糸として納められています。

 

繭玉。生産量こそ減っていますが、品質は一級品です。

 

伝統産業を継承するために

桑の葉を生産しているのは松山紀彦(まつやまのりひこ)さん。養蚕農家の組合である「愛媛シルク工房」の代表も務められています。福祉事業所のスタッフとして働く傍ら養蚕業に従事して8年。西予の伝統産業を「伊予生糸」を後世に継承すべく養蚕に励んでいるものの、絹の需要が落ち込みすぎて専業農家として事業を行うことは困難な状況です。「絹茶」を開発した理由も少しでも農家収入をあげるため。栽培した桑の葉はすべて蚕の餌として使用されるわけではありません。それらを有効活用して売上を作ることで、養蚕事業を安定させていきたいと考えています。

 

生産者の松山紀彦さん。ご自身の桑畑にて。

 

愛媛県西予市にはシルク博物館という養蚕や生糸、絹にまつわる資料をまとめた博物館があります。松山さんはそのまわりに、畑・倉庫をまとめ、生産・視察・体験・販売までをパッケージ化していきたいという夢もお持ちです。ぜひ、「絹茶」を購入いただき、その夢の実現をお手伝いいただけると幸いです。

 

西予市野村シルク博物館と桑畑。

 

※「地理的表示保護制度」は、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度です。

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