無茶々園では温州みかんジュースなどの通年販売品から季節限定のもの、数品種混ぜあわせたものなど約30種類を年間29万本ほど販売しています。子どもから大人まで楽しめる甘めのものや、ちょっぴり苦めな大人向きのものまでバリエーションは様々ですが、無茶々園の柑橘を旬の時期に丸ごと搾り、品種が持つ甘みや酸味、香りにほろ苦さをそのまま感じられるのが特徴です。
今回はそんな無茶々園のジュースができるまでの工程をお伝えしていきますが、なんと無茶々園は自社の搾汁工場や瓶詰め工場を持っていません。搾汁や瓶詰めの作業は同じ明浜町内にある「あけはまシーサイドサンパークふるさと創生館」(以後創生館と表記)を中心に行っています。今回は工場内に潜入取材!完成までの工程をご説明します。
あけはまシーサイドサンパークの製造工場。
原料と製法
ジュースの原料となるのは、無茶々園の基準で栽培された柑橘のみ。出来具合によって味や風味こそ毎年変わりますが、果実本来の味を楽しむことができるのが一番のコンセプトです。柑橘そのものが持つ風味を大切にするために、濃縮還元による調整や香料・保存料などの添加は一切行わず、果汁をそのまま瓶詰めしています。
余談ですが、ストレートと濃縮還元の違いは原料に添加物を加えるかどうか。濃縮還元は搾り取った果汁を加熱したり真空状態にしたりなどして含まれる水分を飛ばし、ペースト状に濃縮させた後、再び水分を加え糖度などを調整します。水分を飛ばしているので保管料や輸送費などのコストが削減できますが、果実本来の風味は損なわれてしまいます。一方、ストレートは果汁をそのまま使用するので原料コストこそ高くなりますが、しっかりと風味を保つことができるのがメリットです。
ジュースの原料になるのは無茶々園の基準で生産した柑橘のみ。
洗浄~搾汁
無茶々園から柑橘を持ち込むと、まず洗浄がおこなわれます。きれいに洗浄が終わると搾汁です。柑橘は主に「インライン方式」「ベルト式」の方法で搾ることができます。「ベルト式」とはベルトで挟み込みプレスし圧搾する方法。皮がついている状態で搾るので油分などの苦みがでることもありますが、皮の風味を生かすことができます。一方、「インライン方式」は外皮がはがれて中身だけ搾汁する方法。ベルト式と比べると皮の苦みが入りにくいのが利点です。また、ひとつの果実から搾汁できる量にも違いがあり、「インライン方式」の方が「ベルト式」よりもたくさん搾汁することが可能です。
以前は「ベルト式」のみで搾汁していた創生館ですが、2023年11月に工場を新設。「インライン方式」を導入しました。これにより搾汁量が向上、より皮の苦みが少ない飲みやすいジュースを作ることができるようになりました。
搾汁した後は
果汁を絞った後の工程ですが、いったん冷凍保管して瓶詰めする場合と搾ってすぐに瓶詰めする「シーズンパック」の二種類があります。大半は味の均一化、長期保存のために一度ドラム缶に充填されますが、商品に特徴を出したり、搾汁した果汁が余りに少ない場合はシーズンパックを選択する場合があります。シーズンパックは加熱回数を少なくでき風味がよくなり、ろ過する回数も少ないため、果実の繊維であるパルプ分が残ってなめらかな口当たり、飲み心地になるのです。ただし、賞味期限が発生するので、すぐに販売を行わなければなりません。
無茶々園では「夏のジューシーフルーツジュース」や「旬生しぼり温州みかんジュース」、「一期一会のかんきつジュース」といった風味や季節性にこだわった商品を作る場合にシーズンパックを選択しています。おおまかにいえば収穫量が確保でき、搾汁量が多い品種は通年お届けできるように冷凍保管、一年に一度しか搾汁できないものはシーズンパックで製造といった感じです。
風味や季節性にこだわった商品はシーズンパックで。
果汁を瓶詰め
空瓶をレーンにセットし、洗浄するところから瓶詰め工程ははじまります。洗浄が終われば果汁の充填工程。貯蔵用タンクから熱殺菌の機能を持ったパイプを通って10本同時に充填されます。透明だった瓶がきれいなみかん色に変わっていく様子はなかなか圧巻です。
充填が終わればスクリューキャップを取り付け、逆さまに転倒させてキャップ部分を殺菌。その後「パストライザー」というトンネル型の装置で約30分間かけて高温・中温・常温・低温と温度帯を変えながら熱殺菌・冷却を行っていきます。
瓶表面についた水滴を風で乾燥させたら目視検品。瓶のなかに異物がないか、瓶自体に不良がないかを確認します。最後に「ラベラー」と呼ばれる機械でラベルを貼って完成です。
デザインにもこだわって
無茶々園のジュースは2016年にデザインや容量を一新して生まれ変わりました。ラベルのデザインは愛媛県西予市在住のデザイナー・井上真季さんによるもの。マーマレードや乾燥野菜などのデザインも手掛けてくれています。
ジュースのデザインコンセプトは「朝の食卓に並んでいたら嬉しくなるもの」。絵柄の繰り返しは柑橘が育つ段々畑の石組みがモチーフです。品種ごとに異なるデザインなので、並べて見比べるのも楽しいですよ。
搾ったあとの残渣は
果汁を搾るときに出る外皮や内皮などの「ジュース粕」。一部は魚や牛の餌に利用されますが、大半は産業廃棄物として処理されます。その量は膨大な量で原料の半分ほど。コスト的にもけっこうな負担になります。
このジュース粕を有効活用する手はないものかと考えた結果、創生館ではそれを堆肥化して山に返すという取り組みをはじめました。これまで産業廃棄物として処理していたものを全て堆肥化し、「みかん堆肥」としてみかん山に返す。地域循環型農業が目標です。
インラインの搾汁粕。果皮がズタズタになっているので食品加工への再利用を難しい。
堆肥化して山に戻し、循環型農業を目指します。
柑橘が収穫できるのは一年に一度きり。一枚の畑から収穫される柑橘のなかには小さすぎたり大きすぎたり、傷が多かったりして生果として販売が難しい果実も多くあります。これらをジュースなどに加工して有効活用することは、持続可能な農業を行うために欠かせない取り組み。ジュースもしっかりご利用いただき、私たちの地域づくりにご協力いただけると幸いです。