真珠の浜揚げ
12月中旬、真珠の浜揚げをした。浜揚げとは真珠を貝から取り出すことである。1年半以上かけて育てたアコヤ貝、この浜揚げで真珠の良し悪しが決まる。貝からポロリと零れ落ちる美しい真珠に歓声が上がる。キズばかりで売り物にならない真珠が出るとため息が漏れる。一喜一憂しながらの作業が続く。
浜揚げの様子。沖から貝を引き揚げて数日以内に真珠を取り出すので、なるべく急いで作業します。貝を専用のナイフで割る係の人は1日5,000 個くらい割ることも。
浜揚げは寒い時期に行う。海水温が下がると、表面に薄くきれいな真珠層が形成されるからだ。私の幼少期は、寒さに震えながら手伝った記憶があるが、最近は気持ちが悪いくらい暖かい。12月だというのに20度に近い気温で暖房も使わず、作業中に汗ばんでくる。1年を通して海水温も高く、その影響なのか、稚貝の生育不良は今も解決していない。
稚貝を育てる
普段は母貝業者から2、3年育てたアコヤ貝を購入し、そこから核を入れて養殖するのだが、貝が不足しているので、試験的に稚貝から育てることにした。1ミリ以下の貝をチョウチンとよばれる細かいメッシュ状の袋に入れて筏に吊るす。数カ月間隔で袋を変え、さらに小分けして入り数を調整、メッシュの目も徐々に粗くして、貝の掃除もする。
この工程を何回も繰り返し、2年くらいでようやく10cmくらいのアコヤ貝になる。真珠養殖との同時進行で仕事も重なり、思うように作業が進まない。袋の目が細かいので汚れるとすぐに酸欠を起こしたり、蟹が入って稚貝を全部食べられたりと失敗の連続。ただ、その経験が2年目3年目と活かされ、だんだんと品質の良い貝もできるようになった。今回の浜揚げには、自分たちで育てた貝からできた真珠も含まれていて、これまで以上に感慨もひとしおだった。まだまだ改善点は多いが、やることはやった。
挑戦と不安
青のりの事業もそうだが、新しいことに挑戦すると何かと忙しく、不安になる。自分の時間を削る。仕事に没頭するあまり家族には愛想をつかされ、好きな本を読む時間もない。周りの人に幾度となく助けられ、迷惑をかけているのではないかと勘繰ることもある。日々、問題が起こるので心配事は尽きない。
そんな時は猪木さんのポエムを朗唱する。
「この道を行けばどうなるものか。危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし。踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となる。迷わず行けよ、行けば分かるさ。」
1、2、3、ダーと勢いよく行きたいところだが、できないのが私。地道にこつこつ、石橋を叩く。お世話になった人には、あとで恩返しをしよう。元気があれば何でもできる。今日も一足を踏み出す。
(佐藤和文)
右:佐藤宏二(父)左:和文
佐藤真珠は明浜の海で真珠を育てて50年。
養殖から製品加工までを一貫して行っています。