お知らせ

無茶々園の農薬事情(秋)

2020.11.13

これまで季節ごとに無茶々園の農薬事情についてご案内してきましたが今回が最終回。秋の病害虫と対策についてお伝えします。この季節、収穫や出荷を目前にして柑橘の栽培管理は終盤を迎えております。

 

高温多湿の梅雨から夏にかけて病害虫の活動は最も活発になります。それだけ栽培管理上で対策が必要になる時期であり、一般的には農薬の使用回数が増える季節です。暑さがピークを越えると影響は小さくなっていきますが、夏の対策は継続して行われます。無茶々園ではサビダニやカイヨウ病への対策が続きます。特に体が小さく発生や加害が見えにくいサビダニは、秋になってから被害がようやく目に見える形で現れ、急いで対策に走らなければならないことがあります。最近は温暖化で秋の気温が高く、こうした夏の病虫害が収まりにくくなってきた気がします。

 

サビダニの被害果。果皮が褐色に変化しています。

 

さて、無茶々園で秋に最も大きな被害を受ける病害虫は、以前から繰り返しお伝えしてきたカメムシです。柑橘園に飛来する虫としては大型で、果皮を突き刺して果汁を吸い果実の食味を著しく損ねてしまいます。カメムシの発生源になっているのは近隣のヒノキや杉の人工林。ヒノキ等の実で繁殖したカメムシが、エサがなくなると林を飛び出して農地へとやってきます。ちょうどそのタイミングになるのが8月末から10月にかけて。柑橘園の生態系外からやってくる虫であり、予測や対応が難しいうえに被害を受けた場合の影響が大きく、無茶々園で有機栽培を行ってきたなかで長年悩みの種になってきました。カメムシに対しては化学農薬以外に有効な対策がなく、こればかりは発生に応じて防除で対応しています。

 

果実にたかるカメムシ。果汁を吸い取り、果肉を損なってしまいます。

 

一般的な栽培で収穫前に行われる防除としては、腐敗防止のための農薬散布があります。皆さんもみかんへの青カビの発生は経験があるかと思いますが、果皮にちょっとした傷や衝撃が加わり、そこに病原菌が侵入すると急速に腐敗が広がってしまいます。これを軽減するために収穫前の畑には殺菌剤を散布するのが一般的です。しかし、無茶々園ではこの腐敗防止の防除は行っていません。農薬にはメリットとデメリットがありますが、まさに腐敗抑制と収穫前の農薬削減は二者択一の選択なのです。

 

秋が深まりみかんが橙色に色づくころには病害虫による影響もほとんど収束します。果実も成熟が進み、今度はイノシシや鳥などの食害がはじまる時期ですが、動物対策での農薬使用はなく柵を設置するなどの物理的な対策を行っています。また、生理現象や冬の強風によって果実が落下することがあります。特にジューシーフルーツ(河内晩柑)はこの生理落果を起こしやすく、無茶々園でも11月に落下防止の農薬使用を行うようにしています。

 

落果したジューシーフルーツ。

 

こうして無茶々園の農薬事情についてお伝えしてきましたが、見た目の悪さは差し引いても、収穫に影響しない範囲で最低限にとどめることを基本姿勢として取り組んできました。各病害虫に対応する農薬については共通のリストを設け、その中から選択することとしているほか、無茶々園として必須の防除は設定することはなく、農家がそれぞれの考えに沿って農薬の使用を判断しています。柑橘の箱に同封している農家メッセージにはお届けした果実の農薬使用状況を記載していますが、ひとつひとつの防除にも農家の判断と作業があり、農家と果実の共同の履歴書でもあります。

 

▼以前の記事はこちらから

無茶々園の農薬事情(冬から春)

無茶々園の農薬事情(夏)

 

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