産物紹介

無茶々園が海産物に取り組む理由

2022.05.19

現在の魚の流通は分業され複雑化しています。消費者は購入した魚が、大まかな場所はわかっても誰がどこでどのように獲ったものかはわからない、生産者も市場へ出した後がわからない。漁師は市場に卸すことで漁獲に専念することができますが、価格決定権がなくなってしまいました。誰もがこのままではいけないとは思いながらも、漁師一人一人ではどうにもならない状態です。

この問題に対して、地域皆で取り組もうと若手漁業者が集まり始めました。まずは、魚の価値を知ってもらう、遠くなった生産者と消費者の距離を縮めたい。そんな思いから海産物セットの取り扱いが始まりました。獲れたものの価値をしっかり伝えていくことは、海産物セットに限らないこと。今回は、海産物セットのサワラと、新物ができたわかめがどのように獲られているかをご紹介します。

 

 

サワラ漁に同行

海産物セットのサワラは流し網漁という漁法で獲ります。流し網とは網を固定せず潮流に流しながら魚が引っかかるのを待つもの。網目より小さな魚は通り抜けますが大きな魚は網に絡まり捕獲されます。

サワラ漁は夕方から夜にかけ、長さ1,000メートルにもなるカーテン状の網を海中に入れて潮流に流しながらサワラが網に引っかかるのを待ちます。

4月上旬、漁師の川原さんにこの漁に同行させていただきました。この日は漁協の会議がありいつもより少し遅めの15:50に出発。漁場が重ならないよう漁師同士で連絡を取り合い決定しますが、それ以外にも理由があります。ほとんどの漁師は夜間でも一人で漁をするため、それぞれの安否確認もかねて定期的に連絡を取り合います。

 

 

16:15今日の網を入れる場所に到着。漁場選びは漁師の勘と経験がものを言います。例年の動向や前日獲れた場所などから決定し、漁場へ。いかりを下ろし、漁の準備をして開始時間を待ちます。この開始時間は季節によって前後しますが、網を流している間に他の船が横切ったりすると事故につながることから網を入れる時間は決められています。

17:40いかりを上げ、網を入れ始めます。1,000メートルの網を海に流すには30分程かかります。流し終わったら一休み。夕食を食べながら魚がかかるのを待ちます。

22:00網上げ開始。漁船のローラーで網を巻き取ること数分、サワラがかかっていました。ローラーを止め、網から外し氷水の中へ。ローラーを動かすときは要注意、衣服が網に引っかかってしまうと巻き込まれる危険があります。この日はタイや蒲鉾の原料となるエソも獲れました。日付が変わって00:15網を巻き取り漁が終了。この日はサワラが30匹ほど、タイ、エソ、アジが2匹ずつ獲れました。

 

 

獲れた魚は漁師の川原さん自身が切り分け加工します。加工した魚は真空包装し、リキッドフリーザーで急速凍結。急速凍結とは、通常の冷凍庫などで凍らせる方法(緩慢冷凍)に比べ、短時間で凍結する方法です。食材を冷凍すると、食材中の細胞の水分が凍り、氷の結晶が生成されます。時間をかけた冷凍ではこの氷の結晶が大きくなり食材の細胞膜を壊し、アミノ酸などうまみ成分が外に出てしまいます。急速凍結は食品の水分が水から氷に変化する温度帯(-1~-5℃)を素早く突破することで、氷の結晶を大きくさせず、獲れた時に近い状態で保存しています。

漁をし魚を捌き冷凍までを一貫で行っていること。これが川原さんの獲った魚のおいしさの秘訣です。

 

わかめもちりめんも

藻は冬場に成長し春に収穫します。わかめは12月に苗となる幼葉をロープに巻き付けそれを沖合で育てます。

春先の磯場には色とりどりの海藻が見られます。陸上に生える植物の葉の多くは緑色ですが、海藻は緑以外にも赤や茶褐色のものがあります。海藻は色の違いにより、緑藻・褐藻・紅藻の3種に分けられます。この色の違いは葉緑素によるもの。海の中では水深により届く太陽光の量が異なり、浅いところに生えるものは陸上のものに近い緑色、深くなるにつれ褐色、赤色に変化します。無茶々園ではその3種の海藻類を扱っています。緑藻は青のり、褐藻はひじきとわかめ、紅藻はふのり。「緑色のわかめが褐藻?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、海の中に生えているわかめは褐色。収穫後に湯通しすることでおなじみの緑色になるのです。今年のわかめは良く育ち、豊作とのこと。5月からお届けするわかめはこの春にとれた新物です。

 

 

ちりめんも春の漁が始まり、祇園丸の船も日に何度も漁に出掛けるようになりました。ゆであがったばかりの真っ白な釜揚げちりめんが干場に広がっています。

私たちは日差しの変化や花が咲き散っていく様子を五感で感じ季節の移り変わりを知りますが、普段目にしない海の中でも魚が生まれ育ち、植物も成長しています。

 

 

普段食べている魚はどこからきたのか

 

遠くの場所からもいろいろな食べ物が届くようになった現代。一方でそれがどうやってできているのかは分からなくなりました。遠くなってしまった作る側と食べる側の距離を縮められるよう、これからもどのようにしてできているのかを発信していきます。それを思い浮かべながらお召し上がりいただけますと幸いです。明浜は入り組んだリアス式海岸に囲まれた宇和海に面し、戦後の経済成長が進むまで、浦々ではイリコなど小魚を獲り、段々畑での畑仕事と合わせて半農半漁の生活を営んできました。

山が直接海に繋がるこの地域では、農業と漁業の距離が近接しています。海の生産者と共に産直販売に取り組むことが環境保全とまちづくりにつながると確信しています。

 

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