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青のり栽培の現状と今後の展望

2022.07.16

真珠の事業と並行して青のりの仕事をはじめ、あっという間に2年が経過しました。365日、1日3度は水槽を覗き込み経過観察しているので、いまや青のり栽培が生活の一部です。青のりは環境に左右されやすく、例えば雨が3日続くと成長速度が1/2になったり、水温も20度を下回ると成長が鈍化したりするので、気候を予想しながら栽培方法を変えています。休みがない割に苦にならないのは、青のりの成長を見るのが楽しくて、金魚や熱帯魚を飼っているような感覚になっているのかなと。先日の日曜日も子どもとの約束を忘れ栽培場に行ってしまった私は、どっぷりと青のりにはまり込んでしまったようです。

 

青のりの育つ水槽を眺める佐藤和文。

子を育てるがごとく愛情かけて青のりを育てています。

 

青のりの種は胞子から回収して自社培養しています。培養を簡単に説明すると次の通りです。まず、1本の母藻を大きくして刺激を与えると胞子が出ます。それをシャーレに集めて種に育てていくのですが、この工程は難易度が非常に高い。同じ作業をしていても青のりのその日の気分?で胞子が出たり出なかったり・・・条件を変えては再チャレンジを繰り返していきます。とにかく種ができないことには事業が進みません。作業の数日間はプレッシャーがのしかかります。成功したら達成感はありますが、生産が止まらないことへの安堵感の方が大きいかもしれません。この青のり胞子の性質が面白く、走光性といって光に集まる習性があります。この走光性を利用することで胞子をまとめて回収できます。光に集まった雄と雌の胞子がめでたくカップルになるとハート型の接合子になります(これも興味深い)。

 

胞子のようす。見えるかな?

 

そして、接合子になると不思議なことに走光性が逆転し、今度は光から逃げる性質になるのです。この行動は薄暗い海底の岩などに付着するのに役立つからだと説明はされています。私が常に参考にしている文献「アオサの利用と環境修復」の中で、著者である東京水産大学の能登谷教授は、この現象についてこう述べています。「これらの行動は、華やかなパーティ会場に現れた男女がダンスを踊りカップルになると闇に消えていくのに似ている」と。人間社会の縮図でもあるかような青のりの世界。魅力が尽きません。

 

できた胞子はシャーレに集めて種へと育てます。

 

さて、事業としての青のり栽培ですが、おかげさまで順調です。年間1トンの生産を目標としていましたが、達成の目途が立ちました。今後は新規のプラントも計画中で、今年度中の完成を目指しています。種の生産が安定してくれば明浜の各地区に水槽を設置して、みんなが手軽に栽培できる地域の産業としての展開も考えています。1本の青のりが数百万の種を生み出し、地域に蒔かれ成長していく。そんなことを考えながら今日も水槽を見つめています。

 

プラントから収穫し、洗浄した青のり。青のりとともに、事業も順調に成長しています。

 

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