創設者 片山元治コラム
「わしらの農業」
column

有機認証の欠点・疑問点

2012.07.25

 私は新JAS法が制定されて、有機農業と言う言葉を使うのが嫌になってきております。
 徹底的な生産工程の管理能力、農薬・化学肥料に対する知識力、流通に対する知識・感性、他人にアピール出来る弁論術等の能力がなければやっていけない。 普通の農家はこんな事出来ません。字の読めない農家はどうなるのでしょうか。先進国の趣味の農法だと言う事がわかりました。このようにして出来た有機農産 物は、少なくとも金持ちしか買うことは出来ないでしょう。
 新JAS法では、環境に配慮する項目は抜けています。つまり、循環型、環境保全、低エントロピー等の自然への配慮は除外され、食べる人間だけが安全であ れば良い思想です。確かに農薬や化学肥料は3年間以上使われないのが前提ですが、許可のある農薬なら何回使っても良い。堆肥や肥料も使ってよいものなら何 処からでもどれだけでもいれて良いのです。
 忌避材ならまだしも、農薬は生き物を殺す為に作られた物です。使えば必ず何かが死にます。その農薬を有機の許可農薬であっても、なるべく使わないと言う思想が新JAS法には無いです。
 農業の基本は、大地と共に心を耕し、全ての生き物と共に生きる事です。そして、生きる為に生き物を殺して食べるのです。「殺す」事が、良心の呵責であ り、その事が自然の恵みへの感謝の念に代わらなければなりません。有機農業は命のやり取りが本当に大切なのに、あまりにも商業的過ぎます。
 有機農業規定は、アメリカの砂漠化しつつある地域で、高度の灌漑施設が完備し、病害虫の密度が高くなると砂漠に戻し、下がると作り、それを多国的に販売する戦略上使われる道具にしかなりえない気がします。

 つい4、5年前は市場に出回る農産物の6割以上に有機農業のラべルが貼ってありました。新JAS法が定義されたら、日本で有機農業で栽培されている農産物は0.1%に満たなくなりました。

 0.1%に満たない農業で、おら達は有機農業をやっているんだと叫んでも空しい気がします。0.1%以下ではお天気も、汚染も何も変わりません。

 大量に使われる農薬・除草剤・化学肥料の総量規制こそが今、自分達の運動ではないかと思うようになって来ました。その点、ISO14001で生産行程を 管理する方が理にかなっていると思います。ISO14001で圃場を管理するという事は、事実を公表し、環境に配慮する努力を評価するシステムだからで す。しかしながら、これも農家がついてくるには難しすぎます。

 もともと農家は農薬も化成肥料も知らなかった。町の人間が作って売りに来て、良く効くから使っただけです。農家は毒とは思ってない。農の薬と思っている。

 農家は裁培技術の勉強はやりたい。言われなくても勉強する。しかし、農薬が毒か薬かまで勉強しなければなりませんか。となると、農家はみんな大学まで 行って化学を勉強した人しかできなくなる。農薬を使ってできたものは消費者は食べるべきです。食べたくないなら、毒を作らせるないでください、売らせるな いで下さい。農家はなければ使わない。結局、毒は、貧乏人が使って貧乏人が食べなければならない仕組みになっている。

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