無茶々園では、農家が各自で箱詰めを行って発送する場合と、かんきつを出荷場に集めてスタッフが選果・箱詰めを行い発送する場合があります。これまでの出荷場は、2000年に他の団体から選果機の設備ごと購入して以来約四半世紀が過ぎ、当時はまだ新しかった選果機をはじめ建物自体も老朽化が激しく、移転・新設の計画をすすめてきました。
2025年3月15日、ついに新出荷場が完成しました。26日に引越し、27日から新しい選果機が稼働開始しています。新出荷場は旧出荷場から車で5分程度(明浜事務所からは車で20分程度)の西予市宇和町皆田(かいだ)地区にあり、ひとまず「皆田出荷場」と呼んでいます。新しい施設に移り環境が劇的に改善され、スタッフのやる気も一層高まっています。(旧出荷場は今後は倉庫として使用する予定です。)
新出荷場で特筆すべき点は、なんといっても新しい選果システムです。
センサー機
①外部品質センサー
従来の選果機は光センサーで糖度・酸度の測定を行っていましたが、新設の選果機は加えて「外部品質センサー」を備えています。「カメラが大きさや色・傷・腐敗などを公正に判定する」という装置です。今までは果実が回転しながら移動していき、人間が目視で腐敗果や傷の多いものを選別、ドラム式(穴の開いた筒状の装置を回転させて穴より小さい果実が落ちる仕組み)で大玉や小玉を分けていました。それなら、選果機がほとんど自動で選別し、人間は不要かというと、決してそんなことはありません。
まず最初に人の手で一玉一玉果実を載せます。カメラに映らない裏側の傷や、判別しにくいタイプの傷がないかの確認をし、カメラの範囲から外れないように適切な位置に置きます。甘夏やジューシーフルーツのように大きめの品種は、間隔をあけて置くなどの必要があります。ここで置き方が不適切だとカメラが判定できず機械全体が停止してしまいます。また、カメラも万能ではなく傷みが判定されず通過する場合もあり、最終的に箱に入る段階での確認も必要です。
②落差がなく果実に与える衝撃が少ない
一般的な選果機は、最初に果実をキャリーからガラガラっと移し、ローラーで転がしながら選別し、出口に向かって落ちていく方式のため、回転や何度かの落下による衝撃が避けられません。箱詰めして発送してからも輸送中の振動が加わるので、衝撃が少ないに越したことはありません。新しい選果機は落差なく移動させる機構を備えており(特許取得)、果皮がデリケートなトマト等でも対応可能だそうです。
ちなみにこの選果システムの商品名は「イタマーズ式」といいます。稼働開始後しばらくはトラブル発生がつきものなので、選果機のメーカーの方が数名一週間以上滞在して対応に当たってくださっていました。初めはひんぱんに停止し、旧選果機の倍の人数で同じ処理量しかこなせない日もありました。それでも日に日にトラブルが減り、順調にラインが流れるようになってきました。この秋には豊作となってこの選果システムの機能を最大限に活用できることを期待しています。
新選果機
今までの選果機
ところで、農家が各自で一般的な選果機を使用して箱詰めしたかんきつは、センサーも通していないのに出荷場で箱詰めしたものより劣ることはなくむしろ「おいしい」と感じることも多々あります。どんなに高機能な設備を導入しても、最終的には人の手によるていねいな作業が重要なのです。作業スペースも確保されており、これを機会に商品の中身だけではなく外側にも気を遣っていけるよう改善を重ねて行きたいと思います。
新しい拠点として「皆田出荷場」をどうぞよろしくお願いいたします。