四国地方は6月8日に入梅となりましたが、梅雨の名前のとおり、ちょうど梅の収穫時期と重なります。今年の梅はよく成っており、連日収穫したばかりの梅を選別して袋に詰めたり、梅干しの漬け込みを行ったりと、追われるように時間が過ぎていきます。
明浜では柑橘類の生産量が圧倒的に多く、梅は補完的に作っている作物なのですが、収穫や果実の取り扱いは柑橘とはかなり違うなと毎年この時期に実感します。収穫に適したタイミングが短く、青梅として出荷できるのは1週間程度、その後は梅干し用としていきますが、これも次の1~2週間程度で終わってじきに熟し切って落果していきます。また収穫後の果実も長く保管しておくことはできず、すぐに出荷するか梅干しに漬け込んでしまわなければいけません。
梅干し漬けの様子
果物が熟する仕組みは、クライマテリック型、非クライマテリック型の2種類に分けられます。果実が肥大して成長したのちに訪れる成熟期の呼吸のパターンと、成熟に関与する植物ホルモンであるエチレンの生成量が違いを生み出します。クライマテリック型では果実の呼吸量とエチレンの生成が急激に増加し、糖や香り、アミノ酸の増加、酸味の減少、果実の軟化や着色といった成熟現象が一気に進みます。
梅、キウイフルーツが典型的なクライマテリック型であり、リンゴや桃、バナナ、マンゴー、柿などはやや穏やかですがこのグループに入ります。“クライマックス”が語源でもあり、まさに劇的な成熟を迎えるのです。
一方の柑橘類は非クライマテリック型。ほかにはブドウやイチゴがこのグループにあたります。呼吸やエチレン生成の急激な増加が起こらず、ゆっくりと時間をかけて成熟していきます。収穫適期の幅が広く、各作業にも余裕を持って取り組めるため、柑橘産地としては梅の性急さが際立って印象に残ります。ただ、クライマテリック型果実ではバナナやキウイのようにあえて成熟前に収穫を行って貯蔵し、人為的にエチレンを処理して出荷適期をコントロールする追熟手法がとれますが、非クライマテリック型は収穫後にはあまり追熟が進まないため樹上で成熟を待つ必要があります。柑橘でも冬の品種は貯蔵しながら出荷していくことが多いですが、減酸や着色などの部分的な追熟もありつつ、基本的には寒波や鳥獣害を避け、樹の着果負担を軽減するためと言えます。
伊予柑の貯蔵の様子
さて、今年の梅は持ち直して豊作基調になりましたが、柑橘の様子はどうでしょうか。昨年は極めて不作でしたので、セオリー通りに考えれば花ばかり咲いて新芽が出にくい状況を想定していました。しかし、この春は花も多いものの新芽の発芽もあり、思ったよりもバランスの良い状態になっています。梅雨明け以降も台風や干ばつ、カメムシと心配事は続きますが、まずは順調な収穫を期待できる出足となっています。