お知らせ

柑橘畑とイノシシ

2025.08.02

山と海に囲まれた自然豊かな町・明浜。およそ2,500人の人々が暮らす小さな町ですが、ここに住んでいるのは私たち人間だけではありません。朝には鳥のさえずりが響き、民家の軒先には猫が寝そべり、夜道はタヌキやハクビシンが横切ります。柑橘畑にはカメムシやカミキリムシ、鹿やイノシシなどの頭を悩ます存在も。

 

 

ワナにかかり暴れるイノシシ

 

イノシシは周知の通り力が強く、時おり市街地にも現れ、大ニュースになっています。近年、無茶々園のある地域ではイノシシによる柑橘被害が増加しています。野生動物が害獣になる瞬間は人間に害を与えたとき。昨年はみかんが少なかったうえに、主食となるどんぐりなどの食料が山に少ないのか、みかんを食べられたり、木をへし折られたり石垣を崩されたりと特に被害が目立ち、無茶々園独自の調査では2015年からの調査で最も多い、例年の約8倍の54,340㎏の柑橘が被害を受けました。昨日まで順調に実っていた柑橘が朝見るとすべて食べられて畑を荒らされるのには農家にとってはこれ以上ない、やるせない気持ちになります。「イノシシに食べられて収穫するものが無くなった」という悲しい言葉を何度聞いたことでしょうか。

 

イノシシ被害調査グラフ(無茶々園独自調査)

 

なぜ被害が増えるのか】

一方で被害の原因として人間が害獣を増やしてしまっている側面もあります。かつては丁寧に手入れされていた山林や柑橘畑も、高齢化や担い手不足によって管理が行き届かなくなり、放任状態になることが少なくありません。そうした場所は草木が生い茂り、イノシシにとっては格好の隠れ場所となってしまいます。被害が多い畑や地域では電気柵や鉄製のワイヤーメッシュで畑を囲ったり、様々な対策をしていますが、すべてを防げるわけではありません。一度人間が手をいれた山林や畑は、荒らすことなく適切に管理し野生動物が人里に降りてこないようにしないといけないのです。

 

畑に張り巡らされた鉄筋柵

 

【狩猟の話】

そんな害獣のイノシシですが、狩猟免許を持っている猟師が捕獲しています。無茶々園の生産者の中にも自ら銃を持ち、山に入ってイノシシを仕留める者が何名かいます。この捕獲したイノシシはどうなるかというと、焼肉やしし鍋にしていただきます。猟師の中にはししラーメンを作る者も。ジビエと呼ばれる野生動物の肉は「獣臭そう」「固そう」といったイメージがあるかと思いますが、しめる技術が上手ければが上手いほどそれらはほぼ感じません。みかんを食べているからか猟師の腕がいいからか。多分そのどちらもですが、とてもおいしいのです。

 

しし鍋用の猪肉

 

【供養碑に込めた思い】

無茶々園の農家兼猟師でもある宇都宮幸博さんは、今年の4月「鳥獣供養碑」を建立しました。「毎回、罠にかかった動物に銃を構えると、目が合って、まるで察したかのように暴れるのです。害獣といえど、命を頂くということに変わりはない。供養を兼ねて祀りました」と語ります。

 

時に動物による被害に悩まされ、時に自然の厳しさに翻弄されながらも、この地で柑橘を育て続けています。もちろん人間都合ですが知恵と技術を尽くして栽培を行う、自然とともにある農業の姿がここにはあるのです。

 

pagetop