「先生、教えてー!」
夕方、明浜中学校の教室の一角から、可愛らしい声が聞こえます。ここは、中学校の空き教室を活用した学童保育「おれんじクラブ」。放課後を安心して過ごせる、地域の子どもたちの大切な居場所です。
かつては、放課後の子どもたちを近所の大人や祖父母が見守るという、地域のつながりがありました。しかし、共働き世帯の増加や核家族化が進むなかで、学童保育は今や欠かせない「子育てのインフラ」となっています。そうした社会の変化の中で、明浜に学童が誕生したのは2015年4月。社会福祉協議会から無茶々園の福祉事業部門が運営を引き継ぎ、現在に至ります。
中学校という場所を活用したことで、卒業していった先輩たちとの交流が続いているのもこのクラブならではの魅力です。一方で授業中には大きな声を出せないという制約もありますが、その時間は宿題や読書に集中する、静かなひとときになっています。
スタッフには教職や保育の経験者もおり、学習支援が充実しているのも特色のひとつ。学童で宿題を済ませて帰ってくるので助かっている、と話すご家庭も多いようです。子どもたちとスタッフとの間には、先生とも親とも違う、あたたかく絶妙な関係が育まれていて、そのやりとりに思わず笑みがこぼれることも。学校と家庭のあいだをゆるやかにつなぐ、心地よい空気が流れています。
もちろん、おれんじクラブにも、人手不足や遊び場の確保、災害時の対応といった課題はあります。それでも、子どもたちと地域の希望がある限り、この場所を守りたいと願っています。子どもを支えることは、地域の未来をつなぐこと。また子どもたちの成長を見守ることは、植物を育てる農業ともどこか重なります。自然の恵みと、人の手のぬくもり。それらに支えられながら育つ子どもたちのそばに、これからも地域のみなさんと共にありたいと思います。