産物紹介

ジューシーフルーツにまつわる数字アレコレ

2024.05.29

春から初夏にかけて、すっかり無茶々園の顔となったジューシーフルーツ。品種名は河内晩柑(かわちばんかん)といい、熊本県は河内町で発見された文旦系の柑橘です。呼び名が様々にある柑橘で、無茶々園ではジューシーフルーツですが、愛南ゴールド、宇和ゴールド、美生柑、ジューシーオレンジといった名前でも流通しています。googleで検索してみたところ、少なくとも9種類の名称が確認できました。WEB上では見つからないマイナーなものも含めればもっとあるかもしれません。

 

熊本県河内町で発見されたので河内晩柑。いろんな名前で販売されています。

 

そんなジューシーフルーツ=河内晩柑ですが、日本国内において約12,000トンが生産されているそうです。そのうち愛媛県の生産量は9,000トン。なかでももっとも力をいれて取り組んでいる南宇和郡愛南町が5,000トンと圧倒的なシェアを誇っています。愛南町は気温や降水量が明浜温州みかんを作るのに不適な気候ゆえ、他の地域に先駆けて河内晩柑の生産に取り組んでましたが、その奮闘の結果ともいえるのかもしれません。

では、無茶々園における生産量はどのくらいなのでしょう。そろそろ出荷もはじまろうとする2月下旬、農家からヒアリングした2024年の予想収量は350トン。秋の干ばつこそありましたが、昨年のような寒波にやられることもなく、しっかり成ってくれました。地域別の生産量は、明浜町50トン、宇和島市160トン、愛南町140トンといった内訳。無茶々園においても以前は愛南町の生産量がトップでしたが、近年は明浜、宇和島が増えてきています。明浜ではこの5年間で苗木を2,000本ほど導入しているので、その比率はまだまだ変わっていくことでしょう。

生産農家数に目をやると、2024年は38軒。内訳は明浜19軒、宇和島14軒、愛南町5軒です。取り組みはじめたころは愛南町の農家ばかりでしたが、この10年で明浜の生産者が大きく増えました。ただ、前述した通り明浜の生産量は農家数のわりに少なめ。それは急峻かつ狭小な畑ばかりという事情があります。愛南町は広く平坦な畑で生産しているため作業性がよく、農家数が少なくともたくさん作ることができるのです。

 

愛南の畑は広くて平ら。作業性良好。

 

次に販売量の動きをみてみましょう。すぐに確認できるもっとも古い実績は2006年ですが、このころの販売量は186トン。ここ5年の平均販売量が290トンなので、この18年で100トン以上伸びています。春から初夏にかけて柑橘の種類が少なくなるうえ、ジューシーフルーツは汗ばむ時期により美味しさを増すので多くの人に求められているのでしょう。

過去最高の販売量を記録したのは2020年の352トン。大豊作で7月後半までがんばって出荷していたことを覚えています。逆にここ10年でもっとも少なかった年は2016年の192トン。資料を振り返ってみるとこの年は寒波により収量が大きく減少し、販売調整に苦慮したようです(当事者なのにあまり覚えていませんが・・・)。寒波といえば昨年も大きな被害を受けました。スアガリをはじめとする被害果が多く発生したのは苦い思い出です。しかしながら、春以降に収穫する柑橘は標高が高くなく、寒のたまらない畑に植えねばならぬというということを腹の底から理解することができました。農家たちも二の轍を踏まないように、リスクのある畑の改植を進めています。

 

販売量推移のグラフ。昨年は寒波で激減しました。

 

標高の高い畑に植わっている樹を伐採している様子。

 

さて、ジューシーフルーツにまつわる様々な数字に目を通してみましたが、いかがでしたでしょうか。ふだん接することのない数なのでピンとこないかもしれませんが、柑橘産地で生産、販売に勤しむ私たちにはいろいろな気づきを与えてくれます。激しい変化が起こっていくこれから、未来の解像度を少しでもあげるためにひとつひとつの数字をしっかり押さえておきたいと思う次第です。

 

【追記】

これまでジューシーフルーツについては折に触れて様々な記事をまとめてきました。あらためてこれらの記事もご一読いただけると幸いです。

・南郡のジューシーフルーツ(2018年5月) https://www.muchachaen.jp/?p=3952

・ジューシーフルーツを楽しむ(2021年5月) https://www.muchachaen.jp/?p=7379

・寒波と向き合う(2023年7月) https://www.muchachaen.jp/?p=11970

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