お知らせ

人事を尽くして天命を待つ

2026.03.14

古今東西、農産物の豊凶にまつわるエピソードには事欠きません。古代エジプトではナイル川の氾濫が実りとともにファラオの正統性を左右し、江戸時代の日本では飢饉が社会不安を引き起こし、飽食の現代でも豊作凶作は食生活だけではなく政治経済にも影響を与え続けています。

 

無茶々園が取り組んでいる環境保全型の柑橘栽培も例外ではなく、みかんの出来はその年の気象によって変わります。農業にとっての安定とはこのような不確実性をどう受け止めていくかも肝心であり、直近の2年ではつくづく思い知らされることになりました。

 

予想を超えて

2025年度産の柑橘は、10月の温州みかんからはじまって、まだまだ春の品種の収穫が続いています。柑橘シーズンとしてはこれから後半に入っていきますが、どの品種をとっても豊作基調となった一年でした。1月までに収穫と出荷が終わった温州みかんでは、昨年の実に2倍くらいの出荷量となり、激しい豊凶の落差に翻弄されました。

 

そもそも2024年が過去最大級の大不作であったため、前年との比較ではかなり極端に見えてしまいます。とはいえ平年の収穫量に比べても2割ほど多く、過去20年では最大の出荷量。やはりかなりの大豊作だったといえます。

 

せとかの収穫風景。

 

豊作の要因は

この激しい振れ幅の最大の要因は気象条件です。昨期は前年秋の干ばつからはじまって柑橘栽培には厳しい気象が続いたのに対して、今期はとても良い気象条件となりました。農業では水が決定的な役割を担っていますが、明浜のように大きな河川がない立地では天水が命運を握ります。花を作る起点となる春先に催花雨がしっかりあり、果実が育つ梅雨から夏にも適度な間隔で雨が降り、水が生育のポイントにあわせて適切に供給された一年だったと言えます。

 

また、全体的に果実の肥大が良く1玉あたりの重量が増えたほか、台風の被害もありませんでした。昨年猛威を振るったイノシシなどの鳥獣が嘘のように鳴りを潜め、カメムシの発生も少なく、結果として記録的な豊作へとつながっていきました。

望外の豊作となったこの秋は、農家は連日山でハサミを入れ続けても採り終わらず、倉庫には収穫したみかんがあふれ、ほとんど休まる間もない繁忙ぶりを極めていました。夏に予想していた見込み量からも大幅に増加した結果、出荷や販売も圧倒的な量に追われる目まぐるしいシーズンになりました。

 

長期的に見れば柑橘の生産量が減少していることを踏まえ、生産体制の再生のために価格改定についてもお願いしてきたなか、今年も私たちのみかんを召し上がっていただいたみなさんには感謝しております。

 

 

全国的に豊作傾向

この豊作は愛媛に限ったことではなく、九州や和歌山などの産地でも同様の傾向となっています。これまで右肩下がりだったみかんの国内生産量も、2025年産に限っては急に回復する統計結果が出てくることでしょう。しかし、いまの流通の状況を見てみると、たとえ豊作であってもかつての投げ売りのような行為はあまりみられず、価格も品質も一定のラインを守っていく動きになっているようです。

 

今期はベテラン農家が「収穫が終わらないかと思った」と話すほどの

豊作となった。

 

豊作を未来へつなぐ

無茶々園でも予想以上に増えたみかんをなりふり構わずに流すようなことは控え、ジュース用の搾汁などに向けていくような対応を取りました。不作だった昨年は果汁も十分に揃えられず、ジュースの企画も後退せざるをえなくなりましたが、このような豊作時にある程度ストックし、継続して加工品も提供できるようにしていく対応です。日本の柑橘産業自体、これまではいかに青果物で動かすかを主眼に置いていましたが、青果と加工品とを組み合わせて総合的に産地を作っていく時代になってきたのかもしれません。

 

 

今年の実りはどうか

さて、みかんの樹も新芽の発芽や開花の時期が近づいています。昨年が大豊作となると、果実を一年間たくさん成らせて樹も休みをとりたくなるのか(実際には結果母枝と貯蔵養分の減少)、翌年は不作となってしまうかもしれません。野菜や米とは違い、柑橘はある年の豊作不作が後を引きやすいのです。無茶々園でも1991年の台風被害で生理が狂ってからしばらくの間、豊作と不作が交互に訪れる隔年結果に苦しんだ時期がありました。昨年の不作、今年の豊作となれば、どうしても2026年産の行く末が気がかりになります。

 

幸いにも花が付きそうな枝の数(結果母枝)はそれなりに見えるようで、第一段階としては最悪の事態ではなさそうです。そこに農家としては肥料をあげたり、潅水したりと、樹の回復に努めていきます。そして今年もまたみかんにとって最適な気象に恵まれれば、また1年後も忙しい収穫期を迎えているかもしれません。

 

無茶々園では台風被害の後、和歌山の橘本神社から柑橘の神様を地域の小さな祠に分祀してもらいました。花を咲かせる少し前の毎年4月3日にはここで春の祭典を行い、秋の実りを祈願しています。昨年は祈りが届きましたが、さて今年はどうか。まずはお祈りするほかありませんね。

 

pagetop