お知らせ

草刈りは自然との勝負

2020.12.07

僕は無茶々園の一生産者の一労働者として働いております。みかん山の仕事で多くを占めるのが草刈り。そんな草刈りに関して思うことを少し。草刈りをしていると自然と陣取りゲームをしているように感じる時があります。みかん山では、農地をめぐる、維持したい人間側と取り戻したい自然側の真剣勝負が繰り広げられています。

 

自然は太陽と水を浴びて数え切れない量の草をはやします。草の中にもいろんな草がありまして、「こいつらさえいなければ」と言いたくなるような手ごわい草たちがいるのです。とにかく育ちが早い草、種が服にくっついてチクチクする草、ほっといたら木みたいになる草、自然側はそんな強草たちを筆頭に安定した攻めを続け、人間側があきらめることを狙っています。また近年では地球温暖化も追い風になり、勢いが弱まる期間がどんどん短くなっています。

 

 

対する人間側。草刈り機をぶん回して、生えてきた草たちを一網打尽にします。時間をかけて生えてきた草を一網打尽にできるということで有利に感じるのですが、草刈にはある程度体力が必要になります。老若男女誰しもが草刈りできるわけではありませんし、一週間ずっと草刈りするというのもむずかしいのです。それにそもそも人間の数が少ない。困ったなーと思うわけなのですが、一般的にはここで登場するのが除草剤。これまで草の地上部だけをちょん切っていたのが根こそぎ枯れさせることができるようになったというわけです。草刈りならぬ草枯らしです。これには多分自然側もびっくり仰天ですね。

 

ここ明浜での陣取りゲームはこんな感じなんだと思います。もっとダイナミックに乗用の草刈り機を使ったり、ヘリコプターで除草剤散布したりするところもあれば、アスファルトやコンクリートで固めて自然の攻めを限りなくゼロに抑えられているところもあります。どんな形であれ人間と自然との陣取りはあらゆるところで繰り広げられています。明浜では人間側がやや厳しい戦いを強いられているように感じますが、もっと大きい視点で見るとどうやら人間側が優勢のようです。ただ、残念なことにこの勝負に勝ってしまうと人間も共倒れしてしまいます。この陣取りゲームは負けるわけにはいきませんが、勝つわけにもいかないようなのです。

 

 

「自然と共に生きる」ってきれいな言葉でいろいろなとらえ方ができますが、ここにその陣取りゲームが深く繋がってくるのではないかなーと思うのです。人間が食物連鎖のピラミッドを抜け出して以来、今日まで陣取りゲームはずっと続いています。この勝負をこれからも続けるということは、自然と共に生きるという言葉の一つの側面をとらえられているのではないでしょうか。勝ち負けで終わらせるための勝負ではなくて、勝負し続けるための勝負をしていきたいなーと思います。

 

だいぶ妄想例え話が広がってしまいました。季節はいよいよ収穫の秋でございます。草の勢いもだいぶ弱まってまいりました。しかしながら、ここから自然側はミカンの実をあっと言う間に排せつ物に変えてしまうとんでもない刺客を送り込んでくるのです。収穫まであと少し。自然との勝負は、まだ続きます。

 


 

斉藤 満天(さいとう まんてん)

21歳。両親は無茶々園生産者の斉藤達文・厚子。三重県の全寮制農業高校を卒業後、天ぷら油カーで各地を訪ねる旅に出る。2020年3月に帰郷し、両親・実習生とともに農業に従事している。


 

pagetop